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大会報告・結果

第25回ダイワへらマスターズ2019全国決勝大会 準決勝戦&決勝戦 2021.04.08
開催日
2021年4月4日(日)
開催場所
千葉県 富里乃堰
大会エリア
西桟橋 渡り桟橋奥
天候
曇り時々晴れ 南風5m前後
気温
15-21℃
参加人数
BEST4の4名
釣況
2021年4月4日、千葉県富里乃堰において第25回ダイワへらマスターズ2019全国決勝大会の準決勝戦と決勝戦を開催しました。 2019年12月7日に富里乃堰で開催された全国決勝大会予選リーグ戦、16名の選手の中から決勝トーナメントに駒を進めた4名の選手。本来は翌2020年4月に韓国ミョンポで4名で準決勝戦と決勝戦を行う予定でしたが世界で新型コロナウイルスの感染が猛威をふるい開催予定でした韓国大邱(テグ)の街も感染者が増加、開催を見送りました。 長引く新型コロナウイルス感染症の影響のため改めて富里乃堰での開催を予定するものの緊急事態宣言解除後のリバウンドのため再び延期。今回の開催に至りました。 開催に際しては感染防止対策を徹底した上で行いました。 再び決戦の舞台富里乃堰に集まったBEST4の選手は天笠充選手、斉藤心也選手、時田光章選手、堀川要一選手。 準決勝戦の組み合わせは斉藤選手VS天笠選手。そして時田選手VS堀川選手。 桜のピークが過ぎた大会開催日。桜の花びらを散らすやや強めの南風が吹いていた当日の富里乃堰では 春の訪れで確実に水温は上昇傾向にあるものの前日の日の照り方や雨、風で状況は刻々と変化するシビアな状況でした。 前日の試釣では日も出ていたため後半にいい感触をつかんでいたものの、曇りの天気と右から左へ流れが出るほどの南風により 選手全員苦しい状況に。風を考慮した短めの竿選びをした選手が少ないながらも釣果を出しました。 準決勝戦を制し、決勝戦に駒を進めたのは斉藤心也選手と時田光章選手。 さらに強まった風の中、時田選手が12枚 7.60kg、斉藤選手が7枚 5.40kgと シビアな状況のなか着実に拾っていった時田選手が2018年に続き2度連続、2014年と合わせV3を達成しました。 おめでとうございます! ダイワへらマスターズ2021の開催はまだ未定ですが開催する際にはご案内させていただきます。 ダイワイベント事務局
時田光章選手が2018年に続いての連続優勝でV3を達成。 準優勝の斉藤選手は10回連続の全国決勝大会出場を達成。 第3位で15回連続全国決勝大会出場の天笠充選手は来年のシード権も獲得しているので16度目の出場権も得た。 同じく第3位の堀川要一選手は2回連続、3度の出場を果たし、次回の全国決勝大会の出場権も獲得。
釣果はご覧の通り。 2年越しの第25回ダイワへらマスターズ2019は時田光章選手の優勝で幕を閉じた。

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2019年12月に行われた予選リーグ戦を全戦勝利で勝ち進んだ4名が準決勝戦を戦った。

対戦は斉藤心也選手VS天笠充選手と時田光章選手VS堀川要一選手。

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準決勝戦の検量風景。まずは斉藤選手と天笠選手。

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続いて時田選手と堀川選手。

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時田選手と斉藤選手の決勝戦がスタート!

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時田選手を追う斉藤選手。

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終始リードを保つ時田選手。

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決勝戦の検量。

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2年越しの戦いを制したのは時田光章選手。おめでとうございます!

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第25回ダイワへらマスターズ2019全国決勝大会予選リーグ戦レポート 2020.02.25
開催日
2019年12月7日(土)
開催場所
千葉県富里市 富里乃堰
大会エリア
西桟橋 渡り桟橋手前まで
天候
終日雨
気温
最低気温5℃、最高気温6℃
参加人数
16名

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伝統のダイワへらマスターズ全国決勝大会も、今年で25周年を迎える。

そんな記念の年に際し、ダイワは例年とは一味違った趣向を用意。例年通りの「全国決勝大会」では準決勝進出者決定の4名までとし、準決勝及び決勝戦を、なんと海を渡っての韓国テグにある・ミョンポで行うという初めての試みを企画したのだ。(2020年4月16日~19日開催予定)。

果たして、韓国行きの切符を手にする4名は...。

全国決勝予選リーグの舞台となった千葉県富里市にある「富里の堰」は、言わずと知れた人気管理釣り場。すでに新べら放流も開始されていて、魚影は抜群。しかし選手達は予想以上に荒れた天候に翻弄されることとなる。

【大会前夜】

12月6日(金)。競技に先立ち、釣り場から約20分、成田空港に隣接する「マロウドインターナショナルホテル成田」にて盛大な前夜祭が開催された。富里の堰での前日試釣を終えた選手達は、やや緊張の面持ちでホテルのロビーに集結。17時ジャストより、まずは別室にて競技ルール説明が行われる。約1時間をかけてじっくりと説明や質疑応答が行われた後、さらに豪華なホールに移動し、18時過ぎより前夜祭がスタート。

この前夜祭も、へらマスターズ全国決勝大会の醍醐味。

関東、関西、東北の予選を勝ち抜いた選手達に昨年シードの時田光章選手(優勝)、斉藤心也選手(準優勝)、天笠 充選手(3位)、松本茂行選手(3位)を加えた総勢16名の選手達は、この前夜祭での抽選によって4名ずつAからDの4グループに振り分けられ、各グループ内で1対1の総当たり戦を3試合行う(競技時間は1試合2時間)。マスターズ伝統のマンツーマン対戦方式は、対面のギャラリーを大いに沸かせる「名物」だ。特に今年はこの4枠に残れば今年は特別な韓国行きの切符を手にすることが出来るので、マスターズ常連選手達の表情にも気合がみなぎる。なんと今年は歴代優勝経験者が16名中7名を占めるという(時田光章、天笠 充、斉藤心也、遠藤裕康、茂木昇一、源 弘次、岡田健司)、稀に見る豪華な顔ぶれの全国大会となっているのだ。

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へらマスターズ優勝カップ

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韓国代表のソン ジョンラク選手。25周年記念大会の準決勝&決勝は韓国ということで、「予選を突破すれば私が優勝だ!」と気合を入れる

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マスターズウェア類も選手達に

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前年度覇者の時田光章選手より、優勝カップの返還

入場してきた参加選手一人ひとりに、ステージ場で全国大会参加記念の楯が手渡される。岡崎一誠競技委員長の挨拶、会場となる富里の堰代表の小谷野行慶氏による乾杯の発声、第三者機関として今年も審判を務める日本へら鮒釣研究会スタッフの紹介、ダイワスタッフによる種々の普及活動の報告など、美味しい料理に舌鼓を打ちながら、会は厳粛かつ華やかな雰囲気の中で粛々と進んでいく。

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岡崎一誠競技委員長より挨拶

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富里の堰、小谷野行慶社長より挨拶

そしていよいよ選手達による抽選会。

会場の雰囲気が一気に引き締まる。

ステージ場でクジを引いていく選手達。その一挙手一投足に会場からも歓声やどよめきが起こる。

まずはいきなり「死のグループ」となったAグループは、遠藤裕康、茂木昇一、鈴木千秋、天笠 充の4選手が顔を揃えた。まるですべての試合が準決勝のような顔触れが予選リーグで揃う。特に第1試合の「遠藤vs茂木」などは、決勝戦といってもおかしくない贅沢な好カードだ。見ている方はたまらないが、本人達の心中やいかに...。

また言わずと知れた「セットマイスター」天笠選手は、ここ富里の堰がホーム。愛好会にも所属し池のクセも知り尽くしていることから、おそらく敵は「勝って当たり前というプレッシャー」だろうか。

いや、マスターズはそこまで甘くないことは、おそらく本人が一番承知していることだろう。油断はなさそうだ。

そしてBグループは韓国のソン ジョンラク、時田光章、岡田健司、大谷芳光の4選手。前述のとおり今年の準決勝以上の会場は韓国ということもあり、ソン選手は「予選リーグで残れば私の優勝だ!」と気勢をあげる。しかしこのグループも強豪揃いで、優勝経験のある時田選手&岡田選手は言うに及ばず、マスターズ全国常連になりつつある大谷選手のセット釣りも折り紙付き。Aグループに勝るとも劣らない「死のグループ」となった。

Cグループは岡安芳明、會田恭平、松本茂行、堀川要一の4選手が名を連ねる。初出場の岡安選手と會田選手が初戦でぶつかるのも面白い運命で、フレッシュな戦いを期待しよう。特に岡安選手は普段の釣行からあの天笠選手に付いて徹底的にセット釣りを学んでいることもあり、期待が高まる。そして実力者の松本選手と堀川選手の勝負にも注目。2人とも必ず釣ってくることは必至なので、初戦は激しい接戦になるはずだ。

最後にDグループに名を連ねたのは、五味亮彦、源 弘次、伊藤泡舟、斉藤心也の各選手。陽気なキャラクターでさっそく前夜祭を盛り上げた長野県から初出場となった五味選手は、今大会のために大量に自作のウキを製作するなど気合十分の選手だ。そして初戦で対するは、「両ウドンの底釣りをやらせたら右に出るものなし」と謳われる関西の名手、源選手。2006年、友部湯崎湖での圧勝劇は、今でも多くのファンの脳裏に鮮明に焼き付いている。そして、意外にもマスターズ全国は初となったトップトーナメンター伊藤泡舟選手と斉藤心也選手の対戦も、予選ではもったいないほどの贅沢なカードだろう。

予選リーグの抽選も終わると、選手達はアルコールの量もそこそこに、明日に備えて各自の部屋へと戻っていく。果たして明日、最高峰の16名はどんな戦いを見せてくれるのだろうか。

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宴もたけなわの中、いよいよ組み合わせ抽選会がスタート

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予選Aグループ

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予選Bグループ

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予選Cグループ

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予選Dグループ

【予選第1試合】

5時30分に起床してホテルの窓の外を眺めると、暗闇にはっきりと雨つぶが確認出来る。

予報ではお昼くらいまでは持つ感じであったが、残念ながら夜明け時点から冷たい雨と風。選手達には酷な状況となってしまいそうだ。

6時過ぎ、富里の堰の事務所に選手達が集まってくる。主催者が用意した朝食を摂り、雨の中、会場となる西桟橋へと入場。余裕を持った間隔を開けつつ、手前からA、B、C、Dグループの順で並ぶ。

そして気温6℃。冷たい風雨の中、7時30分に予選第1試合がスタート。

競技時間は各試合2時間。10時より第2試合、昼食休憩を挟んで13時30分より第3試合。

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激戦の舞台となった富里の堰、西桟橋。朝から冷たい風雨となった

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予選Aグループ

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予選Bグループ

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予選Cグループ

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予選Dグループ

マスターズは全試合マンツーマン対戦制度を採用。とにかく相手に「勝つ」ことが最優先事項であり、全勝(3勝)すれば文句無し。2勝1敗で並んだ場合は直接対決時に勝った方、3すくみの場合のみ、釣った総重量の比較で予選通過者を決定する。釣技だけでない心理戦が繰り広げられる予選リーグこそ実はマスターズの「面白さ」が凝縮されており、相手に勝つことはもちろんだが、それだけではない星取りの駆け引きの妙もあり、対面で見守るギャラリーが予選リーグから盛り上がれるのもまたマスターズならではだ。

富里の堰の状況的に最も手堅いとされたのが、やはりメーターウドンセットだった。竿は最短の8尺でも十分に釣れるらしいのだが、対面の景色の水面への映り込みの関係で、ウキの見やすさから9~13尺といった中尺竿を選択する選手が大多数を占める。もちろんウキの見やすさだけでなく、並びの選手との相対も大きく関係しているだろう。竿の長短に関係なく、ウキを同じ位置に並べない方がアタリを多くもらえるからだ。

メーターセット以外では、新べらを狙った長竿による両グルテンの宙釣りを選択する選手の姿がチラホラ。昨年覇者でセット釣りも大いに得意とする時田選手がいきなり「HERA FX」21尺を継いで、会場をどよめかせる。その「自信あり」の表情から、それは単なる奇策ではないようだ。他には伊藤泡舟選手、そして途中から韓国のソン選手も長竿両グルに変更。底近くの宙をグルテンで狙うと、重量のある新べらが揃うようだ。

また、前評判で「渋ったら強い」と言われていた段差の底釣りを選択したのが、Aグループの遠藤裕康選手。この荒天を受けての判断もあろうが、実際に茂木選手を相手に見事な釣りを披露することとなる。

他には得意のチョウチンウドンセットからスタートした鈴木千秋選手、両ウドン底の源選手以外、多くの選手がメーターウドンセットを選択する。

荒天の中で始まった予選リーグ。午後には雪の可能性も示唆されるほど、とにかく寒い...。

そんな中、富里の堰のへらぶな達は旧べら新べら関わらず、朝から元気。緊張の選手達のウキを序盤から動かし始めた。

スタートダッシュを決めたのは、Cグループの堀川要一選手だ。

堀川選手というと過去の実績からパワフルなチョウチンウドンセットの印象が強いが、実はメーターセットも一級品。完全な浅ダナ地合となった今年の富里の堰で、そのメーターセットが炸裂する。初戦の相手がメーターセットの名手である松本選手であることから、序盤から全開で飛ばす堀川選手。しかし松本選手も当然黙ってはおらず、すぐに追撃態勢を整えて激しいシーソーゲームを展開していく。

Aグループでは、メーターセットを選択した強豪・茂木選手を相手に、段底で勝負に出た遠藤選手が堅実なアタリを演出し、大型を仕留めていく。短めの竿で手前カケアガリを狙っているせいか型もよく、波に乗れない茂木選手をジワジワと引き離していく。

また、天笠選手も盤石の構え。まずはバラケの持たせ方等をチェックするかのような冷静な表情で丁寧に釣り始める。「完全浅ダナ地合」の今回の富里の堰、名手鈴木選手をもってしてもチョウチンは厳しいようだ。

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Aグループの好カード、遠藤vs茂木。遠藤選手が段底で茂木選手を圧倒する

Bグループでは、やはり21尺を振る時田選手が圧巻。「両グルは午後から」という前評判を覆して序盤から早いアタリを連発させ、大型新べらを次々にヒットさせ、雨の富里に大きなゴールドの虹を架けていく。対戦相手のソン選手は試釣で手ごたえを得ていたというチョウチンからか入っていたが、たまらず同じ長竿両グルに変更。追撃を試みるが、時田選手が強過ぎる。

岡田vs大谷の対戦も、静かなる熱戦。メーターセット同士、一歩も譲らぬ鍔迫り合いといった感じで、最後までどちらが勝つか分からない大接戦を繰り広げる。

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Bグループ時田選手が、いきなり21尺両グルで圧巻の序盤

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両グルに切り替えたソン選手が大型新べらを絞る

Cグループ、堀川vs松本もまた、お互い一歩も譲らぬ大接戦。やはり状況的には渋めのようで、お互い冬の「抜き系」をベースにした浅ナジミの釣りでアタリを導き出していく釣りのようだが、残念ながら遠目からその詳細を解読することは不可能。いや、おそらく傍で見ていても分からないほどミクロな世界でのせめぎ合いでバラケをコントロールし、釣り続けているのだろう。

初出場同士となった岡安、會田両選手もメーターセットで堀川vs松本の強豪対決に勝るとも劣らない熱戦を展開。會田選手はここまでチョウチンで勝ち進んできたが、今回は浅ダナでの見事な釣りを披露してくれた。やはりこのカードも検量するまでどちらが勝っているか分からない接戦となった。

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Cグループ堀川vs松本のメーターセット対決

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初出場対決となった岡安vs會田

Dグループでは、最端に陣取った斉藤心也選手がさすがの強さを発揮。近年はチョウチンセットのイメージも強いが、元々は浅ダナの名手。しかも渋い状況での拾い釣りは最も得意とするところなのだ。対戦相手の伊藤選手も長竿両グルで新べらを引き続けるが、それ以上に斉藤選手のメーターが止まらない。勝負にタラレバは禁物だが、もしも初戦の相手が斉藤選手でなけば、伊藤選手はもっと波に乗っていけたはずだ...。

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最端に陣取ったDグループ斉藤選手が堅実に釣る

激しい風雨の中での第1試合、最高釣果を叩き出したのはメーターセットの斉藤心也選手9.9㎏。ヘチという地の利も生かし、テクニカルな拾い釣りはお見事だった。両グルで8.8㎏も釣って敗退した伊藤選手には可哀想だが、これもまたマスターズ対戦方式の妙か...。

次に目立ったのは、やはり9.7㎏を釣って9.15㎏の松本選手を振り切ったCグループの堀川要一選手。「まるで決勝戦」という激しい接戦は、見ている者を大いに沸かせる素晴らしい対戦だった。

メーターセットが手堅い強さを発揮する中、奇策に思えた長竿両グルや段差の底釣りも強さを発揮。特に底近くを狙った長竿両グルでは、予想に反して出だしから新べらが食い、メーター勢を惑わせた。

Aグループ、茂木選手との対戦を制した段底の遠藤裕康選手は9.15㎏の高釣果。やはりこのコンディションの影響か、俄然「段底」がクローズアップされる雰囲気が会場を包んだ。しかし...。

Bグループでは、昨年覇者の時田光章選手が「21尺底近両グル」で他を圧倒。グループ内では頭一つ抜き出た存在になる...かと思われたのだが...。

やはり勝負は最後の最後まで分からない。

そしてさらに雨風が強くなる中、第2試合が始まる。

【予選第2試合】

10時、予選第2試合がスタート。グループ自体は変わらないが、釣り座位置と対戦相手を変えてのスタート。

奥から手前へと移ってきたDグループでは、やはり斉藤心也選手のメーターセットが手堅い強さを発揮していた。状況的にはさらに渋くなっているようだったが、しかしそれこそ斉藤選手の得意分野。手を変え品を変えアタリを絞り出している様子が遠目にもはっきり分かる。

ひとつ奥へと移ったAグループでも、異変が起こっていた。

初戦は茂木選手を相手に素晴らしい釣りとなった遠藤選手の段底にも、いまひとつキレが見られない。両ウドン底の源選手同様、「手前の底」は朝より悪くなっているのか、せっかく初戦で茂木選手を退けたのに、第2試合で貴重な星を落としてしまう。

天笠vs茂木のカードは、今年のマスターズを象徴するような大接戦となった。初戦を落とした茂木選手の立て直しも見事で、同じ10尺で並べた天笠選手とのメーターセットはまさに「ガチンコ勝負」。試合後、天笠選手が「あの第2試合が山場でした。僕も茂木君もおそらくMAXの釣れ具合での50g差。どちらが勝ってもおかしくなかったと思う」と語ったように、今年のマスターズの中でも屈指の名試合となった。

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茂木選手が復調し、天笠選手と両者一歩も譲らない激しい接戦を演じる

Bグループにも「異変」が起こっていた...。第1試合、21尺両グルで度胆を抜いた時田選手が明らかに失速。旧べらを交えてどうにか持ち堪えたものの、4.1㎏と大きく釣果を落とす。通常、朝より日中にかけてだんだん良くなっていく傾向のあった長竿両グルだが、大会当日は「朝が一番良く、だんだん悪くなる」という逆転現象が起こっていた。これも天候の影響なのか...。対照的にメーターセットの岡田選手は冷静な釣りを披露し、ソン選手を退ける。

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第2試合で早くも両グルが失速。試釣とは異なる状況に、時田選手も戸惑いの表情を隠せない

Cグループでは初出場の會田選手の健闘が光ったが、惜しくも堀川選手に400g差で敗れる。同じく初出場の岡安選手は松本選手に敗れるも、激しい食い渋りに松本選手も苦労する中、最後まで食らいついた。

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源vs斉藤。歴代チャンプ同士の対戦に、会場が沸く

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さらに強まる雨...

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検量は電子秤により慎重かつ正確に行われた

2試合を終えた時点で、第3試合を「消化試合」としたのはただ一人、Cグループの堀川要一選手。2勝を挙げ、かつ1勝の松本、會田の両選手を直接対決で下していることから、早々に予選突破を決め、韓国への切符を手中に収めた。

Aグループでは天笠選手が順当に2勝を挙げたが、第3試合、1勝1敗の遠藤選手が天笠選手を直接対決で破れば勝敗で並び、かつ直接対決で勝利しているのでグループ1位となる。

Bグループも同じ状況で、2勝で並ぶ時田vs岡田の直接対決による勝利者がグループ1位となる。

Dグループでは斉藤選手のみが2勝だが、やはり第3試合でその斉藤選手と当たる五味選手が斉藤選手を破れば、逆転でグループ突破となる。

Cグループ以外は見所を残した状態で、さらに悪化するコンディションの中、いよいよ雌雄を決する第3試合が始まる。

【予選第3試合】

昼食休憩を挟んだ13時30分、いよいよ予選第3試合がスタート。風雨が吹き付ける西桟橋にて、韓国行きの雌雄を決する時。

すでに勝敗が決しているCグループももちろん釣り座に入り、最後の対戦に臨む。突破を決めている堀川選手もそれ以外の選手も、真剣な表情でウキを見つめる。勝敗が決してしまっても、最後の最後まで全力で釣りと向き合う。それもまた、伝統のマスターズが作り出す重厚な雰囲気ならではだろう。

コンディションは最悪。気温もさらに下がってきているようで、見ているだけでも寒さで凍える。救いは風がそれほど強くなっていないことくらいだが、それは見た目だけの問題のようで、ウキは手前方向にけっこう流されてしまうようだ。そしてこれが、手前のチョウチンや段底が失速した原因となった様子。底近くを狙う長竿両グルでも振込みが不安定になるなど、少なからず影響があるようだ。

第3試合開始後、全ての選手がアワせるそぶりすら見せない時間が淡々と続く。やはりかなり食い渋りの度合いが進んでいるのか、メーターセットでもほとんどの選手がサワリすらもらえていない。

試合開始から30分、ようやく大谷選手が先陣を切って1枚目を釣る。続いて源選手。ここから一気にウキが動き始めるかと思いきや、その後も静かな時間が続く。北からの風がやや強くなってきたか、ウキが流され、メーターセット組もかなり苦戦しているようだ。

しかしそれ以上に苦戦を強いられていたのが、21尺両グルの時田選手。朝の新べらラッシュはどこに行ってしまったのか、動かないウキに対応を迫られる。竸技時間はわずか2時間。このまま我慢するのか、メーターセットにチェンジするのか。相手はメーターセットでマスターズを制したこともある岡田選手。渋い釣りにも滅法強い。途中から釣り方を変えて勝てるほどアマくない...と踏んだのだろうか、時田選手は勇気を持って前者を選んだ。

1時間が経過すると、メーターセット組のウキもジワジワと動き始めていた。小さめのバラケで魚を寄せ過ぎないよう、1枚1枚を丁寧に釣っていく天笠選手が、やはり強い。ここにきて一発逆転を賭けて両グルにチェンジしていた遠藤選手。勝てば突破となるが、好転の兆しはなく、ジワジワと天笠選手が引き離していく。

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かなり渋い状況となった第3試合。Aグループ天笠選手が冷静に拾い、遠藤選手をジワジワと引き離す

Dグループ斉藤選手も、極度の食い渋りの中でシブい釣りを展開。バラケには盛んに手水が入り、ボソを潰してかなり軟らかくなっている模様。そして、下ハリスをこまめに換えながら、「何かを換えて1枚」という究極の拾い釣りに徹して五味選手を寄せ付けない。

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斉藤選手にくらいつく五味選手。勝てば準決勝進出の目もあったが...

Bグループもかなり渋い戦い。しかしそんな中でもやはり、岡田選手が粘り強く拾う。1時間以上が経過してようやくウキが動き始めた時田選手の両グルだったが、ポツリポツリの状況から抜け出せない。タナを上下しながら旧べら混じりで拾っていくが、前を走る岡田選手との差がどうしても詰まらない。目測では2枚ほど常に岡田選手が上回っている状態が続く。

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メーターセットでカウントを重ねた岡田選手。一方、完全に止まってしまった両グルの時田選手。一時は「勝負あり」の空気も流れたが...

終盤、各グループの大勢が判明してくる。

Aグループはやはり天笠選手が強し。

Dグループも斉藤選手の拾い釣りが止まることはなく、五味選手との差は詰まらず。

そしてBグループは、岡田選手が優勢のまま終盤に突入。時田選手もなんとかアタリを出しているが、いかんせん単発で、逆転するような勢いはない。

韓国行きの4人は堀川選手、天笠選手、斉藤選手、そして岡田選手で決まりか――――――。

雨の会場にそんな空気が流れ始めていたラスト、ひとつのドラマが起こる。

最後の最後、下ハリスを交換した時田選手。後で聞いたが、何か気配を感じ、ここで5㎝伸ばしたのだという。

これが効いた。

しっかりウケてからの、「チクッ!」。

朝の好地合の時を思い起こさせる早いアタリに、「FX」21尺が大きな弧を描いた。

始めは会場の誰もがスレかと思った、それほどの曲がり。しかし、ガッチリと食っていた。

しかもそれは、当日1番の超大型新べらだったのだ。

迷わず立ち上がり、慎重にタモへと導いた時田選手。結果的にはこの1枚が決め手となり、最後の最後で岡田選手を逆転するのである。

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会場が「岡田選手で決まりか」という空気になりかけたその時、時田選手が大型を掛けた。水面に浮上した巨大な新べらに、思わず腰が浮く

【予選リーグ結果】

Aグループ1位は天笠 充選手。第3試合、遠藤選手との対戦は8.4㎏vs4.5㎏となり、終わってみれば盤石の試合運び。やはり第2試合の茂木昇一戦に勝ったことが全てだった。

Cグループ1位は、もちろん堀川要一選手。消化試合となった第3試合は大健闘の岡安選手を僅差で退け、綺麗に全勝での突破となった。

Dグループ1位は全日にわたってシブい拾い釣りに徹した斉藤心也選手。第3試合は5.25㎏vs2.9㎏で突破の可能性を残していた五味選手を危なげなく退け、韓国行きの切符を手にする。

そして問題のBグループは、あの「最後の1枚」が決め手となり、750g差で岡田選手を逆転。時田光章選手が一時は手離しかけた韓国行きの切符を最後の最後でたぐり寄せた。ちなみに時田選手が第3試合で釣ったへらぶなの枚数は「6」。いかにシビアな戦いだったかがお分かり頂けるだろう。

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見事グループ1位で韓国行きを決めた4選手に、決勝トーナメント出場権が与えられた

決勝トーナメントは4月の韓国ということで、今年の日本でのマスターズはこの1日の予選リーグのみ。しかし、この1日だけでも実に様々なドラマが生み出され、非常に見応えのある戦いとなった。悪天候の中最後まで諦めずに戦った最高の選手達が作り上げた、最高に素晴らしい大会であった。

そして年をまたいだ2020年4月、天笠 充、時田光章、堀川要一、斉藤心也という日本を代表するトップトーナメンター4名が春の韓国に渡り、頂点を賭けて争うこととなる。

試釣が出来るのは、前日の1日のみ。

文字通り「地力」が試される戦いで、4人はいったいどんなドラマを生み出してくれるのか、今から楽しみでならない。

<決勝トーナメントレポートに続く>

【予選リーグ突破選手のタックルとコメント】

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左より天笠 充選手、時田光章選手、堀川要一選手、斉藤心也選手

■Aグループ1位 天笠 充選手 メーターウドンセット

竿:「HERA S」10尺

道糸:スペクトロンXP 道糸1号

ハリス:上0.6号8㎝、下0.5号40~45㎝

ハリ:上「改良ヤラズ」8号、下「コム」3号

ウキ:吉田作 プロトタイプ PCムクトップ仕様 ボディ4㎝、6㎝(第3試合は4㎝のみ)

エサ:バラケ「粒戦」100㏄+「粒戦 細粒」50㏄+「セットガン」100㏄+水200cc+「セットアップ」100㏄を手水と「BBフラッシュ」で微調整

クワセ「力玉」さなぎ粉漬け

コメント:

魚をハシャがせないように気をつけながら、寄ったら丁寧に来た魚を釣る、という意識で釣っていった。朝は予想以上に活性が高く、ガンガン打っていて釣り込む場面もあったが、第2試合以降は本当に渋く、拾い釣りに徹した。第2試合でやはり茂木選手が静かに丁寧に釣っていたので、逆を試してみたのですが、やはりダメでした。そこで確信して、かつ僅差で茂木選手に勝てたのが大きかったです。韓国決勝へは本当に行きたかったので、とても嬉しいですし、ワクワクしています。慣れない場所で自分の釣りがどこまで通用するかを見て頂きたいと思っています。

■Bグループ1位 時田光章選手 タナ2.5mの両グルテン宙釣り

竿:「HERA FX」21尺

道糸:0.8号

ハリス:上下0.4号55―70→75㎝

ハリ:上下「バラサ」6号

ウキ:一志「PCムクロング」 11番 エサ落ちは全11目盛中、3目盛沈め

エサ:「新べらグルテン」 50㏄+「新べらグルテン底」 50㏄+「わたグル」50㏄+水 160cc 手水でしっとりめに調整し、「グルテン四季」をパラっと置い足し

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メーターセットとかなり悩みましたが、試釣で後半に良かった長竿両グルに賭けました。本番では逆で、朝イチが一番良くて、だんだん悪くなっていきましたが、メーターセットも爆釣しているわけではないので、1枚が重い両グルを我慢して続けました。アタリは付け根でしっかりウケが出た後に、エサ落ち通過付近での「チクッ」。第3試合では負けたと思いましたが、最後、下ハリスを5㎝伸ばし、その1投で釣れた大型新べらで逆転出来ました。韓国では連覇目指して頑張ります。

■Cグループ1位 堀川要一選手 メーターウドンセット

竿:10尺

道糸:0.7号

ハリス:上0.5号8㎝、下0.3号45㎝

ハリ:上「バラサ」6号、下「サスケ」3号

ウキ:一志「セットスピリット」中細パイプトップ仕様 4番 エサ落ちは全7目盛中、クワセを付けて4目盛出し

エサ:バラケ「粒戦」100㏄+「とろスイミー」50㏄+「セットアップ」100㏄+水200cc+「セット専用バラケ」150㏄+「軽麩」100㏄

クワセ「力玉 大粒」さなぎ粉漬け

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試釣では長竿両グルもやりましたが、自分はいまひとつ釣れなかったので、メーターセットに賭けました。ゼロナジミ抜き系のセットです。大エサを打たないよう、アタってきたらどんどん小さくし、へらをクワセに近づけるイメージで釣っていきました。

■Dグループ1位 斉藤心也選手 メーターウドンセット

竿:「HERA S F-SPEC」9尺

道糸:0. 6号

ハリス:上 0.5号8㎝、下0.25号&0.2号 45、50㎝

ハリ:上「極ヤラズ」7号、下「軽量極関スレ」2、3号

ウキ:仁成作「極細パイプ」 B5㎝ エサ落ちは全7目盛中、クワセを付けて4目盛出し

エサ:バラケ「粒戦」50㏄+「粒戦 細粒」25㏄+「セットガン」100㏄+水 180cc+「セット専用バラケ」100㏄+「パウダーベイトスーパーセット」100㏄+「軽麩」100㏄

クワセ「感嘆1袋に対してさなぎ粉30㏄をあらかじめ混ぜておいたもの」10㏄+コーラ15㏄

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試釣の感触で明らかに浅ダナ地合だったので、チョウチンではなくメーターセット一本に絞りました。へらはメーターより上にいる感じだったので、手水でどんどん練ってまずバラケのボソを殺して、かなりペトっとしたダンゴタッチのヤワエサで釣っていきました。本当はもう少し長めの竿を振りたいところでしたが、9尺が極ヤワのバラケを振れる限界でした。釣り方としては真冬のような、バラケが3回に1回持つか持たないかといった抜き系のセットで、そこから下ハリスの倒れこみの間だけアタってくる感じでした。かなり渋い状況で「こう」という決め手はなく、ハリスやハリをこまめに換えながら、換えた1投で釣る...というような完全な拾い釣りでした。

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